会社も保険種目も
異なるシステムを一つに
元々各保険事業会社で異なる背景・仕様で構築され使用していたシステムを、新たに一つの共同システムに構築することは極めて難しい。
新システムは、世界で250社を超える導入実績をもつGuidewire社製ClaimCenter(保険金支払業務に特化したグローバルパッケージシステム)をベースとして構築することとしたが、実際にシステムを稼働させるまでの道のりは困難に満ちていた。
「基本方針は『パッケージシステムの標準機能を最大限に活用する』としていましたが、現場で利用するユーザにとっては制約になる場合もあります。旧システムでできたことが新システムでできなくなった場合に、我々が提案するシステムの代替案で業務運営が回るのか、業務を行う上で現場の生産性が落ちてしまわないか。保険事業会社とのシステム要件調整には非常に長い時間と大きな労力をかけました。」(T.S)
従来の業務フローを
最新のシステムへ
MS&ADシステムズでは、多くのプロジェクトで主にシステム要件調整から外部設計、および総合テストの工程を担当しており、内部設計・製造から結合テストの工程は開発パートナー会社に委託することが多い。今回のプロジェクトは開発コストを抑えつつ、高品質なシステム開発が不可欠であり、MS社・AD社のシステム要件をどれだけシンプルかつ共通化することができるか、が一つの大きなカギだ。
「保険事業会社からシステム要件が提示されたときに、そのままシステム仕様として落とし込むのではなく、本質的に業務要件を満たすためによりよい設計を模索する必要があります。入社後すぐに参画したプロジェクトであり、損害サービス業務知識およびClaimCenter自体の知識も乏しかったため、保険事業会社で使われている業務マニュアルを読み込んでシステム要件を確認・調整しながら設計を進めました。」(K.O)
新システムで保険金支払業務の基本要件を実現させることは当然のことだが、それだけでは業務全体としてのさらなる業務効率化・生産性向上は見込めない。業務フローを細分化しながら、新たな機能も構築した。
膨大なテストを経て実装した
業務
効率化のカギ「傷害自動化」
新システムにおける新たな機能の一つが「傷害自動化」だ。これはお客さまへ早期に保険金をお支払いすることを目的とした機能である。傷害保険などの事故受付内容や保険金請求書の受領を元に、事故受付から保険金支払いまでの一連の手続きを自動で処理する。もちろん高額支払いとなるケースなど自動化対象条件に合致しない場合は、自動支払いを止める設計になっている。保険金支払いの要件を充足しているのか人的判断が必要になるケースを除き、人を介さずに確実に保険金支払いができる事故を優先的かつ最速で行うことができる機能で、国内外を問わず保険会社各社で進められている業務効率化の最先端だ。
「傷害自動化は、お客さまの専用ページから入力された情報から保険金支払い手続きが進みます。そのためさまざまな手続きを想定したテストパターンが膨大にあり、『本当にそんな支払い契約があるの?』『そんな操作できるの?』と思ったほどでした。お客さまにご利用いただいて、最初の自動支払いデータが発生したときには、今までやってきたことが頭の中を駆け巡り、感動しました。」(K.O)
新たなステージ、新たな活躍へ
「入社から24年経ちますが、ここまで規模もコストも大きいサブシステム単体の開発は経験したことがありませんでした。会社員人生でこれ以上の大規模プロジェクトにかかわれることは、二度とないのではないかと思います。開発期間中は本当にいろいろなことがありましたが、なんとか計画通りにリリースできたことは、胸を張れる実績ですね。」(T.S)
「入社前からこの共同新システムについて興味があったため、ステージ3の開発にも携わりたいと思っています。現在は火災・傷害・新種保険の保険金支払い業務を担当していますが、将来的には自動車保険の保険金支払い業務の設計・開発にも挑戦してみたいです。」(K.O)
「ステージ3を完遂させることで、ようやく共同新システムとして一つの区切りが見えます。共同損サプロジェクトの経験を活かして、他のサブシステムの再構築でも力になれると嬉しいです。」(T.S)